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Allgood Story 深井 喜翔

Allbirdsではゲストスピーカーのストーリーと参加者同士の対話を通して、
「自身・他者・地球に優しい行動を応援する」トークイベント
Allgood Storyを開催しています。

今回は、ダウンや石油由来素材の代替品としてカポックの実を使用したアパレルを展開するKAPOK JAPAN代表の深井喜翔さんをお呼びしました。

「サスティナブルへの参加コストを下げたい」と言う喜翔さんには、どんなAllgood Stroryがあるのでしょうか?それでは覗いてみましょう。

スタートアップの代表兼、創業76期目の4代目後継

僕は、大阪にある深喜毛織という、日本で唯一残っているカシミアの一貫工場17社しかない認定工場がルーツで、祖父がセーターの貿易から初めました。

大学は湘南にある慶應義塾大学(環境情報学部)に入学。その後社会人をした1年目に3ヶ月休み、後で詳しくお話ししますがトルコで子供達との共同生活をしていました。

2017年に家業に戻り、2020年にKAPOK KNOT創業しました。実は3年続いた会社がなくて、自分で作ったKAPOK JAPANが始めて3年続いた会社です(笑)

創業3期目のスタートアップをしながら、創業76期目の4代目後継というのも両方やっています。週末と月曜日は大阪の家業へ戻り、火曜〜金曜は東京に来て、毎週行き来しています。

20年前に受けた世界平和のためのサスティナビリティ教育

僕が10歳の頃から参加していたNPOのキャンプで、教育の一つとして「サスティナブル デベロップメント」というのがあったんです。

この団体は1947年にアメリカの心理学者の方が作ったもので、10カ国くらいから10歳の子供を集めて一ヶ月間共同生活をします。幼少期に出来た友達は一生物。将来その国と戦争しそうになった時に、「その国に友達がいるから戦争をしない」となってほしいという思想でできたNPOでした。

団体からはっきりと教えられてきたのが、サスティナビリティ=目的ではなく、手段。世界平和を目指す団体で、それを実現するために、重要だと教えられてきた4つの項目の中の一つにサスティナブルデベロップメントがありました。

そして、20歳の時にキャンプを運営する側になり、サスティナブルとはどう言う意味なんだろうかと言う根底作りをやっていました。

SDGsってSustainable Development Goalsの短縮なのでゴールなんだろうけど、ゴールの先に何があるのか?と言った時に僕の根本的なところは世界平和だと思っています。

現在戦争が起こってしまっているけれど、戦争をなくすためにはこの項目が必要なんだよって言うのを教えられてきたし、教えてきたのが僕のルーツです。

社会に良いことだけではサスティナブルではないと学んだ

大学時代ではソーシャルマーケティングという、社会性と事業性を両立するにはどうしたら良いのか?を考える学問を学んでいました。

毎年あるゼミで宮古島に行き、障害を持っている方が作ったほうれん草の売上をあげるという課題に取り組んでいました。

ただし、その時に言われて驚いたのが 「障害者が作ったという文脈は抜いて売ってくれ」 ということでした。

僕はマーケティングはストーリーを乗せて行うものだと学んでいたので、『これの何をソーシャルグットと言うの?』と悶々としていました。

しかし、その理事長によると「障害者が作っているという観点で売れても、絶対続かない。だからそうじゃない売り方を学生さん達に考えてもらいたい」ということでした。

この理事長の言葉を聞き、サスティナビリティを押してビジネスをするのは違うんだなって言うのを学んだんです。

『意識の高い一部の人が取り組むサスティナブルは誰かに任せよう。誰もが参加できるサスティナブルを取り入れたい。』

そんな気持ちを持ち、自分の信念が見えてきました。
サスティナブルの参加コストをゼロにする。
これができれば世界が変わっていくんじゃないかと思いました。

苦悩の連続から見えた一筋の光

家業に戻ったときには親戚一同「これで安心や〜!」と喜んでくれましたが、『俺の人生は家業の後継だけで良いのか』と葛藤がありました。

服が足りない時代に服を作るのは重要だったので家業の仕事は素晴らしいが、今後50年間仕事をするのに、この領域は自分である意味あるのか?服をたくさん作っているメーカーがある中で、自分が人生かけてやる必要あるのか?そう思っていた時期がありました。

親戚一同喜んでくれているけど自分としては何かモヤモヤするな。という、誰しもが感じる課題感を感じていた気がします。

この課題感を向き合おうと思った時に、学生時代に言われた言葉を思い出したんです。
その言葉は、『なんかの領域を学びたいんだったら、まずは100個事例を集めてみたら?』

事例100個集めて見えてきたのが今のカポックの事業です。

ファストファッションの台頭と環境負荷

100個事例集めた時に、何が課題なのかを見つめ直していました。
ファストファッションの台頭自体は良かったかもしれないけど、人にも地球にも負荷が重くのしかかっている。

実際になぜこの負荷が解決されていないのかというと、3つあります。

① インドネシアでは平均賃金が5年で2倍になるので、服の単価は上がるはずなのに、服の単価はどんどん下がっています。何か画期的なイノベーションがこれを埋めているわけでもなく、縫製は一枚一枚ミシンで縫うしかない。
結局のところ、過重労働、児童労働を行うか、アパレル企業が利益を削るという手段しかありません。

② エコなものは高価であること。富裕層の方しか取り入れられないエコより、みんなが参加できるものにする必要があります。僕達の『サスティナブルの参加コストを下げたい』につながる所です。

③ 結果的に世界で2番目の汚染産業になってしまっている。これら全て不のスパイラルなのでなかなか抜け出せません。

それなら、川上から全部の流通を自分達でやって、フェアな値段で買った原料をフェアな価格で売る。
そんなブランドを目指そうと思いました。

家業のルーツは素材だったので色んな素材を漁り、前職は旭化成だったので前職の先輩から教えてもらい、紆余曲折してようやく辿り着いたのがカポックの素材でした。

カポックの魅力

KAPOKは非常に軽くて暖かい。木の実なので、木の伐採も必要ないと言うのが特徴です。

また、繊維の中が空洞になっており、そこに暖かい空気を溜め込むので、ダウンの代わりにすごく向いている素材。ダウンのように動物を傷つけることもなく、更にカポックはダウンの20分の1の値段で、サスティナブルへの参加コストがとても低い。

しかし、カポックにの弱点である非常に軽くて繊維が短い為、加工しづらいという課題がありましたが、布団屋の家業と旭化成の共同開発でシート加工することが可能になりました。

実はブランド立ち上げをする前にBtBの事業をしていて、カポックを加工したシートを色んなブランドに営業しに行っていました。

しかし当時2019年はサスティナブルについてあまり意識が高くなかった時代だったので困難。営業先では、実績はあるのかとの質問。(実績がないから営業しに行っているのに!笑)

だったら売れるところ見せるぞと思い、立ち上げたのがKAPOK KNOTの始まりでした。

最後に、これまでの経験を通じてシャアしたい3つのこと

1つ目は、「万全の状態」はあり得ないということ。

よく皆さんから「どこまで考えてやってたんですが?」と聞かれます。答えはそこまで考えていないです。何かを成そうとするときに、答えが出ていることはまずないし、正解がない今の時代に対して、どう前に進もうとする力を得るのかが重要だと思っています。

2つ目は、「ものづくりと自己拡張」
自分というものが広がれば(自己拡張すること)、世界平和につながると思うんです。僕らの場合は、産地へ行ってカポック農家さんと話して、自己拡張を得られる。

ものづくりをしていると強烈な無力感を味わうことがあります。カポック農家の方はこんなに頑張っているのに、僕は全然助けれていないと。ですがそんな無力感が自分を成長させてくれますし、ものづくりには自己拡張をさせてくれるステージもあることも大きな魅力と思っています。

3つ目は、「WILLに人は集まるということ」

KAPOK JAPANは原料を買って、繊維にして、小売まで流通をカバーしようとしています。
普通のアパレル企業は商社を2社程挟んでいるので、川上から全て自分達で全部やるのは無茶だ、というのは分かっているんです。でもやりたいと言い続けていたら協力してくれる人が集まってくれました。

なので自分で全部やろうとしなくても、「自分はこうしたい。でも何も出来ていない」 と正直に打ち明けると人はWILLについて来ます。なのでスキルがなくても、自分のWillを押し出せば、なんとか前に進む力を持てると思います。

深井 喜翔

(KAPOK JAPAN株式会社代表取締役、双葉商事株式会社取締役)

1991年生まれ、大阪府吹田市出身。
2014年慶應義塾大学卒業後、ベンチャー不動産、大手繊維メーカーを経て、家業である創業76年のアパレルメーカー双葉商事株式会社に入社。

現在の大量生産、大量廃棄を前提としたアパレル業界に疑問を持っていたところ、2018年末、カポックと出会い運命を確信。KAPOK KNOTのブランド構想を始め、クラウドファンディングで新規事業を開始。2020年には、KAPOK KNOTの運営を軸としたKAPOK JAPAN株式会社を設立。